2017/9/19

日本経済新聞に掲載されました

AlonAlon
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NPO法人、富津にコチョウラン農園
重度障害者も働きやすく
高付加価値の商品に特化 月給10万円をめざす

知的障害者に働きがいのある職場をーーー。
NPO法人のAlonAlon(アロンアロン、千葉県いすみ市)は日本財団の支援を受け、障害者の手でコチョウランを栽培する農園を開設した。付加価値の高い商品に特化し、重い障害を抱えていても毎月10万円の給料を受け取れる職場つくりを目指す。
富津市に今月オープンした「AlonAlonオーキッドガーデン」は温室内の照度や気温の管理・調節作業の多くを機械化し、コチョウランが育ちやすい環境を常に保つ。定員20名のスタッフは障害の度合いに応じ、水やりや余分な芽の摘み取り、茎の調整といった作業を担当する。
オーキッドガーデンは重度の障害者を対象とした「就労継続支援B型」という施設に位置づけられる。B型で働く障害者が受け取る賃金は全国平均で月1万5千円(2015年度、厚生労働省調査)。障害の度合いが比較的軽いA型でも月6万8千円にとどまり、障害者の経済的自立は難しい。
コチョウランで安定した収入を得るために編み出したのが「苗のオーナー制度」。オーナーがコチョウラン1本分の市価に相当する1万円を出資した場合、農園は10本の苗を仕入れることができる。半年間の栽培期間を経て開花させた後、1本をオーナーに届け、残りの9本を慶弔用として企業に販売する。
オーナーは市価と同じ値段でコチョウランを購入する形になり、金銭的なメリットはない。しかし最初に投じた1万円が半年間で10万円分の価値を生み障害者の生活を支える。アロンアロンの那部智史理事長は「私たちは売り上げではなく『共感』を得ることを目指したい」と話す。
オーキッドガーデンの総工費約6000万円のうち、日本財団が3800万円を補助した。笹川陽平会長は「コチョウランは付加価値が高い。ここから直接販売すれば中間搾取もなく、収益を得られる」と事業性を評価する。
障害者の就労には待遇面以外にも課題が多い。アロンアロンは当初、ほかの地域で農園開設を検討したが「『周辺の地価が下がる』と地元の反対を受けた』(那部氏)。政府が掲げた「一億総活躍」は障害者の就労支援をうたったが、理念や実践が浸透しているとはおよそ言いがたい。「就労支援の成功例としてコチョウランが『満開』になるよう期待している」と笹川氏。冷静なビジネス感覚と温かい福祉の融合は、障害者が自立できる環境づくりのカギを握る。

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